君という海に溺れる




絡まっていた鎖が解けていく。

鈍い音をたてて落ちた鎖から錆びた臭いが鼻を掠めたけれど。

あの海が心の中で微笑むから。

少しだけ、息をすることが出来た。




「そういえばさ、お姉ちゃん知ってた?」




そのままリビングに入り椅子に腰掛ければ、お茶を片手に座っていた妹が突然顔を上げて。

思い出したように手をうった彼女。


唐突な質問に何のことだと首を傾げれば、彼女はおもむろにテレビをつけチャンネルを回し始める。


意味のわからない行動に私はその姿を見続けるしかない。


何かを探しているのだろう。

その手は迷うことなく目的のものを目指していた。


そんな姿にドクリと心臓が鳴る。


体を過る何かの予感。




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