君という海に溺れる
足を運んだ。
思いのまま、彼のいる場所に。
そこに見つける後ろ姿。
駆け出したい衝動を抑え、ゆっくりと彼の名前を呼んだ。
「アダム」
今日もいつもと変わらず木の幹に背を預ける彼。
その背中に後ろから声をかける。
ぴくりと揺れるアダムの肩。
振り向いたその顔が一瞬とても寂しそうに見えたのは、私の気のせいだろうか。
瞬きをしてしまえば、目の前の表情はあの微笑みに変わっていて。
目を細め手招きするアダム。
初めて会ったあの日と同じように、木漏れ日に揺れているアダムの姿はやっぱり綺麗だ。
私はアダムに誘われるまま彼のもとへと足を進めていく。
緩やかな風が、二人と世界を隔てた。