君という海に溺れる
愛しそうに弦をなぞる彼の指。
その姿はあの日と少しも変わることなく西洋の絵の世界を思わせる。
まるで切り取られた世界のような。
けれど、彼はきっとどんな絵画よりも美しい。
その表情が変わるたび増していく魅力。
それはページを捲るたびその色を増す物語のようだと思った。
竜を倒す勇者のように。
運命の恋をするお姫様のように。
見れば見るほど、知れば知るほど引き込まれていく。
そして、とても儚い存在だ。
彼の髪が風になびいて、その存在までも連れ去ってしまいそう。
降り注ぐ光に溶けてしまいそう。
そう考えたらぎゅっと切なさが込み上げて。
熱くなる目を隠すように固く目を閉じた。
──────────コポ、