君という海に溺れる
「俺ね…もうすぐ、此処に来れなくなるんだ」
アダムの言葉が何を意味しているのかはわかっている。
もう、こうした穏やかな時間は終わりを告げるのだ。
(あぁ、やっぱり)
予想と寸分も違わぬ彼の言葉。
それをわかっていたから。
私は戸惑うことなく静かに"うん"と言葉を返す。
私の返事に驚くこともなく、アダムも頷いた。
きっと彼も知っていたのだ。
私の答えを。それが持つ意味を。
「久しぶりに、聞いてくれる?」
──────────コポ、
綺麗な瞳。綺麗な微笑み。
弦に指を掛けながら可愛らしく首を傾げて問われた言葉に、私は小さく頷く。
私の返事を確認すると、アダムはゆっくりとその瞳を細めて指で弦を弾いた。