君という海に溺れる
それは十五年以上前の、まだ空気の冷たい朝のこと。
いつものように朝帰りをした俺は、そのまま家に帰る気にもなれず近場の公園に足を踏み入れた。
「…静かー…」
この辺りに住み始めていくらか経つが、立ち寄ったのは初めてだと思う。
いつもは見ているだけの場所。
昼を過ぎれば子どもたちで賑わうこの場所も、時間が時間のせいかとても静かで。
不思議、というか。
まるで誰も触れていない雪のような。
普段とは違う、どこか神聖な雰囲気を纏っていた。
「…ハァー…」
そんな雰囲気に似合わない音を一つ。
人が集まる広場から少し離れたところにあるベンチに腰を下ろせば、途端に口から漏れる細い溜息。