君という海に溺れる
(音楽に、じゃないのかな)
(俺の言葉は、届いてる…?)
いつも頭の中を廻る思い。
人が集まる理由が、自分の音楽にではないような気がして。
それが怖くて仕方なかった。
決定的な理由があるわけでも、証拠があるわけでもない。
けれどどこか、空気が違うような気がしている。
見られているものが、違う気がしている。
そしてそんな思いのせいで目の前で曲を聞いてくれる人を信じられなくなっている自分。
それが何より怖かった。
「ーっ」
ぶり返した苦しさに思わず体を丸めれば、サラリと肩から滑り落ちた長い髪。
胸下で揺れる髪が、今は見えない己の容姿を思い出させる。
それは俺が苦しみに囚われる原因。