君という海に溺れる
そんな俺を包んだ声という名の暖かな波の音。
「きれいなのにどうして?」
小さな女の子は不思議そうに首を傾げ俺を見上げる。
嘘のない瞳が、俺の瞳を覗き込んでいた。
"綺麗"
その言葉は確かに俺に衝撃を与えた。
それはある意味聞き慣れた言葉。
けれど彼女の唇が紡いだ穢れのない言葉は、今まで聞いたどの言葉よりも純潔で。
その白さに息を呑む。
「きれ、い…?」
俺が紡ぐそれは、彼女と同じ白にはなれていない気がするけれど。
少しでも近づいていればいいと、近づいていてほしいと心の中で願った。
繰り返した言葉に、大きく頷いてくれた彼女。
あの笑顔のままで。
ゆらりと揺れる胸の波間。
「わたし、だいすきだよ」