君という海に溺れる




その言葉の重さを。大切さを。

俺でさえ、この子と出会ってやっとわかったその意味を。

他の子どもたちがあと何年もかけて学んでいくたくさんのことを、彼女は知ってしまった。




(こんなことって…あるんだ)




一体何が彼女をそうさせたのか。

それはわからない。

俺が口を挟める話ではない。




(でも…)




けれど、それはどれくらい寂しかったのだろう。

どれくらい悲しかったのだろう。


思いが伝わらないあの苦しさを、この子はこの年で味わってしまったのだろうか。

こんなにも小さな体であの辛さを一人抱え込んでいたのだろうか。


そんな彼女に重ねてしまう自分の姿。


自分の歌が届かないのではないかという不安に寂しさが押し寄せる。




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