君という海に溺れる
まだ舌足らずな音で発音されたそれは、俺が言葉にするよりもずっと可愛らしく聞こえて。
(俺もわりと舌足らずだけど…全然可愛い)
そんな俺に気付いていない彼女は、物珍しそうにギターに目を奪われていた。
少しだけ、この相棒が羨ましいと思ったのは秘密だ。
「これで歌を作るんだよ」
そう言ってギターを抱え直す。
いつも新しい曲を作るときのように。
ゆっくりと音を鳴らせばキラキラと輝く彼女の瞳。
純粋な瞳に俺の心までワクワクとときめいて。
彼女の反応が嬉しくて、思い付くままに弦を弾く。
歌詞も名前もないけれど、曲というにはあまりに簡素かもしれないけれど。
それでもどこか彼女に似た音を。