君という海に溺れる
言葉では表しきれない思いをこの音楽に乗せる。
「すごーい!」
一通り引き終えれば、彼女は初めて会ったあの日と同じようにパチパチとその手のひらを鳴らした。
花が咲いたような笑顔とともに。
────────コポ、
(あぁ、もう…っ)
彼女は知らないのだろう。微塵も気付いていないのだろう。
今、どれほど嬉しいかなんて。
その笑顔が俺をどれだけ幸せにしているのか。
その真っ白な笑顔に救われているのかなんて、きっとわかっていない。
(ねぇ、気付いて…?)
綺麗な瞳が細められて、俺は呼吸を取り戻す。
無くしかけていた色が世界に戻ってくる。
彼女が喜んでくれるならと、俺は再びギターに手をかけた。
あの微笑みを求めて。