君という海に溺れる
俺はそのまま公園の奥へと足を進めていった。
ベンチから少し歩いたところにある小さな丘。
街を一望できるその場所で、大きな赤い傘がゆらりゆらりと揺れている。
すぐにあの子だとわかった。
だけど、その後ろ姿にズクリと不気味な音をたてる心臓。
(なに、これ)
どうしようもなく嫌な予感が体の奥から沸き上がって。
ポタポタと雨を受けながら音を鳴らす草木に俺は足を踏み出した。
傘に当たる雫の音と共鳴するように早くなっていく鼓動。
今すぐ彼女のところへいかなくてはと警告音が鳴り響く。
そんな俺の足音に気付き振り返ったあの子に、いつもの笑顔はなかった。
「お、ねぇ…さ…!」
代わりにその顔に浮かんでいたのは初めて見る涙。