君という海に溺れる




出来る限りの柔らかい声色で問い掛ければ、その瞳からポタリと零れ落ちた一筋の雫。

それが、ゆっくりと俺の指を濡らした。

その冷たさにズキンと胸の真ん中が痛みを覚える。


彼女はただただ涙を溢れさせるばかりで言葉を紡ごうとはしない。

まるで何かから逃げるように。

ただひたすらギュッ眉に力を入れ唇を固く縛る彼女に、切なさが込み上げた。




(泣かないで)


(どうかお願い)


(笑ってみせて)




浮かんでくる想いはそればかり。


悲しみに暮れるその涙を止めてあげたくて。

笑って、ほしくて。




「大丈夫。一緒にいるよ」




そっと彼女の小さな手をとって奏でる。

彼女が好きだといったこの声で。

彼女のために作った歌を。




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