君という海に溺れる




考えてもみなかった。

この子と会えなくなる日が来るなんて。


理由もなく、ずっと一緒にいられるのだと思っていた。

疑うことすらしなかった。


そんなこと、あるわけないのに。


彼女の涙がこれが真実なのだと俺に告げる。




(この子が、いなくなる…?)




俺の海が、消えてしまう。

手の届かないところへ行ってしまう。


突如目の前に突きつけられた現実に頭がついていかない。


目の前が真っ暗になるというのはこういうことなんだろうか。

まるで俺のなかだけ時間が止まってしまったような、そんな感覚。

目頭が熱くなって、視界が歪んでしまいそうになった。


でも、それでも泣くなんて出来なかったんだ。




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