君という海に溺れる
「おね、おねえさんに、会えなくなっちゃう…っ!」
"いやだよ"
そう言って、顔をくしゃくしゃにして泣く彼女がいたから。
苦しそうに涙を流す彼女がいたから。
彼女の涙は見たくない。
いつだって、笑っていてほしいと願う。
(俺が泣いたら、きっと君は俺のために涙を流すから)
それは思い上がりなんがじゃなく、彼女は流すだろう。
俺のための綺麗な涙を。
だから、俺は泣くわけにはいかなかったんだ。
優しい彼女をこれ以上悲しませるなんて、絶対に出来なかった。
そんなの、俺が許さない。
ただ彼女の小さな体を、俺に抱きついてきたその体を目一杯に抱き締める。
濡れる体も降り積もる雨も、今はどうでもよくて。