君という海に溺れる
どうか彼女が安心してくれますように。
そんな切なる願いをこの腕に込める。
そして、トントンとその背中を叩きながらまたあの歌を口ずさんだ。
「─────…」
それは雨の音に負けてしまいそうなくらい小さな声だったけれど。
それでも俺の服を掴む彼女の手に力が籠ったから、ちゃんと届いているのだと確信した。
他の誰にも聞こえなくていい。
彼女にだけ届けばいいんだ、この歌は。
「…必ず、会いに行くよ」
どれくらいの間そうしていたのだろう。
いつの間にか途切れていた歌。
その隙間を埋めるように、俺の口からは自然とその言葉が飛び出していた。
俺の言葉に赤く晴れた瞳で不思議そうにこちら見上げる彼女。