君という海に溺れる




決して離れてしまわぬように、ずっと。


雨のせいか人の疎らな公園を二人で歩く。

静かなこの場所は、初めて出会ったあの日の風景に似ていた。


気付けば降り続いていた雨は止んで、空に架かる七色の橋。




「すごい…!」


「綺麗だね」




美しく儚げに浮かぶ虹を見上げながら二人で笑い合う。


この時間が止まってしまえばいい、と何度も思ったけれど。

それが出来ないことを俺たちはよく知っているから。

離れることのないこの手がそれを物語っている。


だから、たくさん笑い合ったんだ。

この瞳に君の笑顔を焼き付けておくように。

忘れてしまうことのないように。

君が、いつか僕を見つけられるように。


君と交わした約束を違えないように。




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