君という海に溺れる
「おねえさん!またねっ!」
「またね!」
そう言って歩き出した君の背中をいつまでも見つめていた。
まだ幼い君は忘れてしまうかもしれない。
この一瞬のような季節を。
けれど、俺が忘れないでいるから。
笑顔も涙も、与えられた幸せも。
だからどうか、歌だけはいつまでも届いていますように。
君が好きだと言ってくれたこの声で歌い続けるよ。
必ず迎えに行くと、この海に誓おう。
「…あ、もしもし?俺だけど」
いつか訪れるその日まで、精一杯の努力と我慢を。
「今から練習できない?すごい、歌いたいんだ」
あの日から二十年近い歳月を経て、僕は再び君のもとへ帰る。
雨は上がった。
(そして虹が架かる)
──────side Adam, end.