君という海に溺れる
それまでの時間を全て帳消しにされてしまうような不快感。
向けられているはずないとわかっていても気になってしまう人からの僅かな視線、溜め息、話し声。
全てに押し潰されそうになる。
息苦しいそれに苛まれながら、もう何度目かもわからない深い深い溜息を吐いた。
(…早く降りたい。あ、でも降りたら家に帰らなくちゃいけないのか。それも嫌だ。そしたら降りないほうがいいのかな。いや、でも…)
ぐるぐると終わりの見えないループ。
答えなど決して見えない問い掛け。
車体が揺れるたび纏まらなくなる思考は私の弱さ故なのか。
そんなことを思いながらひたすらあてもなく窓の外を眺める。
ただただ、流れゆく景色。
見るというよりも、映すに近いであろうその行為。
それに意味があるのかと問われればないと答えるだろう。