君という海に溺れる
それは長い歳月の中で私の心の奥深くに閉じ込められてしまっていたけど。
それでも消えることのなかった思い出。
幸せそうに笑う女の子は幼い日の私。
その隣で綺麗に笑っているのは、私に幸せを教えてくれたあの人。
今よりも幾分か若い、アダム。
色褪せた写真の中でもその魅力は少しも揺るがない。
流れる髪も、細められた瞳も、三日月を描く唇も。
何一つ色褪せないまま。
私はずっと、この人の影を追い続けてきたのだ。
唯一、私の心を真っ正面から受け止めてくれたこの人を。
この手を繋いでくれた人を。
「あの頃は女の人だと思ってたから」
幼い私はそれを疑ったこともなかった。
それくらい全てが綺麗で眩しかった"おねえさん"。