君という海に溺れる




「…ずっと、探してたんだ」




懐かしそうにその写真を指でなぞりながら笑うアダム。

その顔に心臓の真ん中あたりが疼く。


あの頃と同じようで、けれどずっと成長してしまった鼓動の高鳴り。




「後悔もしてた。何であの日、親御さんに会いに行かなかったんだろうって。そうすれば会えなくなることはなかったかもしれないのに」




そう言ってアダムは悲しそうに顔を歪める。


同時に鮮明に思い出すあの日の記憶。

最後の日の、記憶。



私がそれを聞いたのは本当に偶然だった。


雨が降っていて外に遊びに行くことが出来なかったあの日。

たまたま家の中を歩き回っている途中で聞いてしまった会話。


引っ越しのきっかけは両親の離婚だった。




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