君という海に溺れる
当時の私はそんな家族の状況を正確に理解できていたわけではなかったと思う。
ただ何となく、これからは父親と離れてしまうのだろうということだけは幼心にわかっていた。
けれど、それを悲しいと思うことはなかったのだ。
決して嫌われているわけではないと知っていたから。
それよりも先に私の頭を過ったのは"おねえさん"のこと。
ただ"おねえさん"に会えなくなってしまうということだけが、どうしようもなく寂しくて。
気付けば家を飛び出し公園へと走り出していた。
「離婚だったんだ。母親に引き取られて…十年くらいして近くに戻ってきたんだよ。この辺は父親の実家の近くだったから」
「そっか。そうだったんだ」