君という海に溺れる




あの日、"おねえさん"の前で大泣きしたのをよく覚えている。

ただ悲しくて。

会えないなんて信じたくなくて。

でもそれ以上に来てくれたことが嬉しくて。

ただただ泣いた。


そんな私に彼は歌ってくれたのだ。

私のために作ったといってくれたあの優しい歌を。




「…一番最初のアルバムにあの曲を入れたのはわざとだった?」




私の一番好きなあの人たちの曲。

それは、紛れもなく"おねえさん"が歌ってくれたあの曲だった。


初めてそのアルバムを聞いたときから一番好きだと思った。


胸が苦しくなるくらい懐かしい言葉。

息が出来なくなるほどの旋律。

無意識のうちに涙は流れて。


そのアルバムを見つけるまでに私は十年近い歳月を費やした。




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