君という海に溺れる
窓の外には同じ速度で変わっていく世界。
流れる景色は全て同じように見えて、全て違うようにも見えた。
そして、全てが作り物のようにも見えた。
最寄りの駅まではあと少し。
あともう少しの我慢でこの空気から抜け出せる。
音で溢れた空間から解放される。
そしてまた待ち構えている次の空気と出会うのだ。
そう思ったとき。
(…ん?)
ふと、何かを視界の端に捕らえた。
ほんの一瞬だけ見えた景色。
(…虹…?)
雨でも降っていたのだろうか。
灰色の雲が広がる空にうっすらとかかっていたのは七色の橋で。
雲の切れ間から差し込む太陽の光がキラキラとそれを照らしていた。
そして、その麓に見えた場所。
あれは…丘、のようなものだったのだろうか。
特別、変わったようなものではない。