君という海に溺れる




夢の少女と今の私が、ようやく一つに重なった。


そうすれば、動いた唇は自然とあの言葉を紡ぐ。




「だいすきだよ」




だから、笑って。



同時に私の顔に戻ってきた笑み。

作り物じゃない、本物のそれ。


あの頃のように笑えている自信はまだないけれど。

あの頃以上の愛を込めて微笑むから。


どうか、笑っていて。


そんな私の言葉に、今度はアダムが驚いたように息を呑んだ。

そしてその瞳と唇がゆっくりと綺麗な三日月を描く。




「ありがとう。俺も、大好きだよ」




大切な言葉とともに私に向けられた、記憶の中の姿と寸分も違わぬ笑み。

ふわりと今の彼に"おねえさん"の姿が重なる。


その姿に、幼い頃の私が嬉しそうに笑った気がした。




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