君という海に溺れる




そして目の前の彼に、私の心が微笑む。

トクントクンと高鳴る胸。

それは心地いい呼吸音。




「…あの頃とは、違っても…?」




純粋に会いたいという思いだけだったあの頃。

きっと憧れだった。

けれど、今の私がアダムに向ける感情は"憧れ"なんて綺麗なものだけじゃない。


心に宿る想いは確かに愛だけど、それは大きく形を変えて恋になってしまった。


会えない時間、あの人の声に歌に恋をして。

この場所で出会ってから、私は確かにアダムに恋をしてしまった。


絶対に叶わないと知りながら。


彼はあまりにも遠すぎる。

そう、思っていたのに。




「うん。でも…それは俺も一緒だから」




───あの頃とは違っても、二人の"好き"は一緒でしょう?




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