君という海に溺れる




「その、笑った顔が見たかったんだ」




そう言って、アダムの微笑みが木漏れ日に揺れた。

穏やかな波の音が広がっていく。


彼の微笑みがくれたのは探し続けていた幸せの在処。

彼の存在が私を生かす。


彼の隣で、私はやっと呼吸する。




「ねぇ、ハナ。最初の嘘はなしにして…もう一度初めからやり直さない?」




それは、私とアダムがついた唯一の嘘。




「俺の名前は───────君は?」




──────コポ、



あぁ。やっと帰ってこれた。




「私、は───────…」




そして始まる、もう一つの物語。






君という海に溺れる。
(この想いとともに生きる場所)


End.
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