君という海に溺れる
それと同時にどこか懐かしさが沸き上がる。
初めて来た、知らない場所であるはずなのに。
体の奥の小さな何かがどうしようもなく疼いて。
何かが叫び出しそうで。
何故だか無性に泣きたくなった。
丘の向こうにあるのは見慣れたものと同じような町並み。
何処にでもある普通の景色。
しかし、感じたのはまるで違う国のような色彩だった。
思わず息を呑んで立ち尽くす。
(…なんで…?)
どうしてそんな風に感じるのだろう。
見えている景色と感じている景色が一致しない。
脳の奥が揺さぶられる。そんな感じ。
感じたことのない感覚に戸惑い立ち尽くす私の姿はかなり滑稽だと思う。
それでも動くことは出来なかった。
すると、そんな私の背中を押すように小さく聞こえてきた音。