君という海に溺れる
一体それからどれくらいの時間が経ったのだろうか。
まだ数分かもしれないし、何時間も経っているかもしれない。
それでも時間なんて気にならないくらい、あの音色に身を沈めていた。
もしかして、本当に白いウサギが時計を持って時間を奪ったまま何処かに行ってしまったんだろうか。
なんてくだらないことを考えてしまうくらい幸せな時間。
そんな居心地のよかった音色もついに終わりを告げた。
(終わっちゃった)
途切れた歌声に目を開ける。
勿論そこには時計を持ったウサギなんていやしない。
勝手に聞いておきてあれだが、終わってしまうのがとても悲しくて寂しくて。
無意識に目の奥が熱くなる。
胸の奥がぎゅっと詰まる。
もっと聞いていたかった。
もっと感じていたかった。
そんな我が儘な思いが溢れそうになった。