君という海に溺れる
それは誰もが知っている雨上がりの伝説。
「…虹の麓には、宝物があるっていうでしょう?」
閉じていた目蓋を上げて瞳に夕焼けを映す。
そこにあの瞬間に見えた虹はないけれど、視線をずらせば隣には同じように視線をこちらに向けているアダムの姿があって。
綺麗な口元は静かに微笑みを浮かべ、細められた瞳が穏やかな灯りを映し出していた。
コポリと水の音が体に響く。
あぁ、どうやら幼い頃に聞かされた伝説はあながち間違ってはいなかったらしい。
だって、ほら。
虹を追いかけて走った先には、眩しいくらいの笑顔を持った宝が確かにあった。
木漏れ日に揺れる。
(虹の麓の宝に誘われて)