君という海に溺れる
「あ、れ…?」
そのパネルから目が離せない。
正確には、そこに写っているあの人の姿から。
ドクドクと早く脈を打ち続ける心臓。
その音は脳の奥の方まで響いた。
周りの音が聞こえなくなるくらい大きく、深く。
パネルになっている写真は恐らく今回のアルバムの宣伝用に撮り下ろしたものだろう。
ジャケットや中のパンフレットもこの姿で写っているはすだ。
彼らの独特な雰囲気を余すことなく表しているセンスのいいそれ。
しかし、何故かその写真に僅かな違和感を感じた。
いつもと変わらず美しい姿に感じるこの違和感は一体何なのだろう。
(いや、違和感っていうか…なんていうんだっけ、これ…)
違う。違和感、ではない。
私は、この感覚を知っているのだから。
思わず眉を寄せ目を細めてそれを凝視する。