君という海に溺れる
あの頃からまるで衰えというものを知らないあの人。
変わらないわけではないのに、なお光り輝き続ける人。
パネルに写る姿はかつての姿に似ていて。
その面影を私は確かに知っていた。
「とりあえず…予約しよう」
うん、と一人小さく頷きパネルの隣に置いてある薄い予約用紙を手にとって。
少しだけ浮上した気分のままレジへと向かう。
二週間後、私は一体どんな表情をしてこれを受け取ることが出来るのだろうか。
笑っていられたらいいと思う。
いや、きっと笑って受け取れるはずだ。
そう思いながら緩んだ口元をその紙で隠し真っ直ぐに歩みを進めた。
このときの私はまだ知らない。
それだけではない懐かしさが込み上げていたことを。
あの日の残像。
(それは忘却の彼方)