君という海に溺れる
「──────────ハッ」
短く吐き出した息が一日の始まりを迎え入れた。
途切れるような息苦しさを感じるとともに、じわりじわりと浮上していく意識。
最初にその感覚を取り戻したのは聴覚で。
何処かで鳴く鳥の囀りと遠くで鳴り響く踏み切りの音を捉えた。
二つの相容れぬ音色を聞きながら、暗かった視界が少しずつ開けていく。
いつまでたっても慣れることのない光が世界を告げる。
次に感じたのはすっと鼻を抜ける冷たさ。
目蓋の裏に微かに感じる光の色と肌を差す空気の味に、夢から覚めたのだと自覚した。
じわりじわりと覚醒していく頭の中。
そして同時に、これから始まる一日に落胆する。
私には毎日規則正しく流れるこの二十四時間は少々長すぎるようだ。