君という海に溺れる




「おはよ」


「…ん」




私が降りてきたことに気付いたらしい妹からの挨拶。

それに小さく返して学校へ向かう支度を始める。

視線が重なることは、ない。


私がそれを避けてしまっているのかもしれないが。

いつからだったか。
それが出来なくなったのは。


別に意図的に避けているわけではないのだ。

ただ、どうしても口から出る音を調節出来る自信がない。

その音が相手を不快にさせるであろうということがわかっているからこそ、余計に口を開けなくなった。


今は、瞳を合わせることすら怖いと感じている。

視線が交わることを恐れている。



───────────コポ、




(息が、詰まる)




それは突然だった。

家を飛び出ていた彼女が此処に戻ってきたのはほんの数週間前のこと。

その体に新たな命を宿して戻ってきたのだ。




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