君という海に溺れる
まだ若い、学生の彼女。
あとから話を聞いてみれば、私以外の全員がその事を知っていたらしい。
私だけが、蚊帳の外。
きっと周りが気を使った結果だと思うが、それは余計に私を苦しめた。
そんな二つの事実がわかった頃からだったように思う。
それ以前から違和感のあったこの世界で、更に息が苦しくなったのは。
目の前に広がる当たり前の世界が別世界のようにこの瞳に映った。
そして、その世界を私はまだ受け入れられずにいる。
(…吐きそう)
腹の内側から込み上げてくる表現しがたい色の感情。
まるで深い深い海の底のような、太陽の光を知らない色。
それが血液のように身体中へと廻っていく。
頭のてっぺんから足の先まで巡回していく。
くらくらと回る目の前の景色。
乱れ、苦しくなった呼吸が私を襲って。