君という海に溺れる
(…苦しい…)
表情が、日に日に乏しくなる。
それに一番に気付いたのはやっぱり自分自身で。
少しずつ笑えなくなり、涙の回数も減っていった。
そのたびに増えていく作り笑い。
深く息を吸うことは出来ないらしい。
ゴポリと水が喉の奥を刺激して、それを閉ざしてしまうようだ。
改善しなくてはと頭で思えば思うほど、状況は悪化していく。
船は航路を照らす灯火を見つけられない。
「…時間ないから、もう行く」
誰と目を合わせることもせず伏せたまま鞄に手を伸ばす。
用意されていない朝食は気にならない。
もうそれが日常になって久しいのだ。
それを寂しいと思うこともなくなってしまった。
ただ少し、呼吸が苦しいと体の奥が訴えるだけ。