君という海に溺れる




カラカラに渇いた喉を絞って小さく呟いた"いってきます"という言葉は、誰かに届いたのだろうか。


届いて欲しいと考えながら、届かなければいいと願う。


そんなことを思いながら、特に着飾ることもせず玄関に向かった。


髪は櫛でとかしただけ。

服はいつも同じような簡単なもの。

無駄な努力をする元気は近頃の私には残っていないみたいだ。

もともと大した見た目ではない。
よくて中の下くらいのもの。


それなら、頑張る必要なんてないじゃないかと思ってしまったから。


重たい足を動かし、靴を履いてドアノブに手を掛けて。


あと少しで外に飛び出せる。

少しだけ腹の底の重りが軽くなった気がした。


眩しい日差しの下に出るまであと少し。


その時




「…お姉ちゃんさぁ…いい加減理解してよ」




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