君という海に溺れる
顔は誰にも見せられない。
きっと今の私はどうしようもなく酷い顔をしているのだろうから。
鏡なんて、見なくてもわかる。
今の私は自分の感情に完全に負けてしまっているのだと。
ただでさえ平凡なこの顔が更に醜くなっているのだと。
理性という仮面さえつけられないほどまでに。
そんな顔を絶対に見られたくはなくて、咄嗟に顔を俯かせる。
見える灰色の地面に焦がれた海の色は映らない。
(何でいっつもこうなの)
まるで先の見えない鬼ごっこをしているようだ。
いくら逃げたって逃げ切れるものじゃないのに。
現実は待ってくれないのだから。
いつかその影を踏まれてしまうのに。
それでも私はいつまでも逃げ続けようとしている。
世界は、こんな私を弱者だと笑うのだろうか。