君という海に溺れる
そして気付けば走り出していた私の足。
電車には乗らずに向かう、一駅先のあの景色。
彼がいるかどうかはわからない。
約束をしたわけではないから。
何より、あれは本当に偶然の出会いだったから。
けれど、彼がいないとは思わなかった。
何故かはわからない。
でも彼はそこにいると確信していた。
それは理屈なんかではなくただの直感で。
それでも私の足はその直感を信じて走り続ける。
あの声を、笑顔を探すために。
「はぁ…はぁ…っ」
普段運動不足のせいか、簡単に切れる息。
辿り着いた頃には額から汗が滴り落ちていて。
それでも
「また会ったね」
再び出会った微笑みに、生きているのだと実感した。
動き出す世界。
(水の音が近付く)