君という海に溺れる
少しだけ、体の奥で燻っていた灰を綺麗な空気で吹き飛ばして。
生きていると感じた。
すぅと細く息を吸い込み私の瞳にアダムの姿を映す。
すると瞳の中で更に笑みを深くする彼。
そしてちょいちょいと手招きする彼に、私は引き寄せられるように彼のもとへと近付いていった。
少しだけ間隔を空けた場所に静かに腰を下ろす。
その微妙な距離は地面についた手を少し伸ばせば触れられる、曖昧な距離。
これが、私と彼の距離。
「今日は来るような気がしてたんだ」
座ったと同時に聞こえてきたアダムの言葉に私は彼へと視線を向けた。
けれど問い掛けたかった"何で?"の言葉は声にならず、すぐに視線を町並みに向けることになる。
彼の瞳が秘密だと笑っていたから。