君という海に溺れる
子どものようなそれは、どこか確信のある瞳だったから。
「私も…いるような気がしてた。でも会えるとは思わなかった」
少しだけ視線を落として小さく呟く。
その声は隣にいるアダムの耳にはちゃんと届いたらしい。
ふわっと緩やかに空気が揺れて、なびくその茶色い髪。
彼が不思議そうに首を傾げているのだとわかった。
「どうして?」
会えると思わなかったのかと、彼は問いたいのだろう。
言われなくとも感じ取れるその声色に、
私は躊躇うことなく言葉を紡ぐ。
「だって…中途半端でしょ、此処」
アダムの問いにそう答えて丘の下に広がる景色を眺めた。
初めて見たあの日と同じ景色。
とはいえ此処は私の家の最寄り駅からたった一つ。
もっと言えば、二つの駅の中間地点辺りにある場所で。
県どころか市も変わらない。
つまり、いつも私が見ている景色と同じなのだ。