君という海に溺れる
広がるのは東京のように高い建物があるわけでもない、だからといって田園が広がっているような際立った田舎でもない。
本当に中途半端な、景色。
そんな世界が嫌いだった。
けれど、そのどちらとも成りきれない世界はどこか私に似ていて。安心するのも嘘じゃない。
きっと私のような半端者にはちょうどいいのだと思うけれど。
(でも…この人は、ねぇ…)
心の中の本音とともに、ちらりと視線を彼に向ける。
さらりと風に揺れる髪と彼を取り巻く空気。それはとても独特なもので。
隣に座る彼には、綺麗な瞳と儚い空気を身に纏うアダムにはこの中途半端な世界が不釣り合いな気がするのだ。
この景色にその姿はよく似合うけれど、この小さな世界の風景にアダムはとても異色。