君という海に溺れる
アダムの色はとても柔らかいけれど、それと同時に複雑な極彩色のようだと思った。
「ハナ、俺にはこの景色似合わないと思ったでしょ」
確信めいた言葉に現実に引き戻される。
気付かないうちに、アダムの瞳をじっと凝視していたらしい。
掛けられた言葉にハッと我に返れば、目の前の彼は眉を下げ困ったように笑っていた。
困ったように笑っても綺麗なその顔。
まるで崩れることを知らないみたい。
(私とは大違いだ)
しかし、そんな彼の顔は微かに寂しそうな色を浮かべて。
その陰りにドクリと音を鳴らす心臓。
高鳴りだとか、そんな言葉では表せない鼓動の音。
胸の奥が、嵐の風を受けたように痛い。
どうしてだろう。
私は、この痛みを知っている。
そして不意に言葉が口を出そうになった。