君という海に溺れる
「ハナはどうしたの?」
「…何が?」
「何かあったから、来たんじゃないの?」
お互いに目の前に広がる景色を眺めながら、無言の時を過ごしている中、おもむろに口を開いたのはアダムの方で。
相変わらずのゆったりとした速度で紡がれた言葉は、その緩やかさとは裏腹に断定的に私を捕らえた。
(…何でわかっちゃったんだろう…)
決して責めているわけではない物言い。
それが、更に私の心を彼へと縛り付ける。
何故か、逃げることは出来ないような気がした。
しかしその質問に答えることが出来ない私。
怖い、のだと思う。
汚い私を知られる勇気はないのだ。
だけど、一人抱えたままでいる勇気もない。
本当に、なんて弱くて狡い人間なんだろう。
この心の内を知って、それでも彼は私の隣に座っていてくれるのだろうか。