君という海に溺れる




アダムの言葉を引き金にして、花火が弾けるように甦ってくる今朝の気持ち。

同時に世界から音と色が消えた。



『いい加減納得してよ』



落とされたあの子からの言葉だけが耳の周りで鳴り響く。

聞きたくないといくら頭を振ってみても何度となく繰り返すそれ。


終わることのない無限の闇。

光を無くした船は押し寄せる大波に飲み込まれてしまいそう。

道は見えず、逃げる術も見つからない。


忘れることの出来ないその声に込み上げる吐き気。

このまま、沈んでしまうのだろうか。


気持ち悪い、キモチワルイ。


自然と眉間に力が入り、きつく歯を食い縛った。



───────────コポ、




(…あぁ、私はまだ…)




まだあの海に、約束したあの場所に帰ることが出来ていないのに。




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