少女Sの忘却



はじめは、嬉しかったのです。


誰もが少女Nの目に入りたい、そんな事を願う中で。


私だけが彼女を独占出来ることが。


私は彼女に選ばれてしまった。


来る日も来る日も私は少女Nと花薗に篭り、双子の少女……それ以上に片時も離れず。

花の精が運ぶ蜜を舐め、鮮やかな茸のソテーを堪能し、絡まる蔦をハンモックに昼寝を楽しんだのです。


私は少女Nを確かに、愛していました。


そしてまた、少女Nも私を愛していた。


彼女は何でも私と共有したがり、鏡の様に同調していました。


< 4 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop