少女Sの忘却
はじめは、嬉しかったのです。
誰もが少女Nの目に入りたい、そんな事を願う中で。
私だけが彼女を独占出来ることが。
私は彼女に選ばれてしまった。
来る日も来る日も私は少女Nと花薗に篭り、双子の少女……それ以上に片時も離れず。
花の精が運ぶ蜜を舐め、鮮やかな茸のソテーを堪能し、絡まる蔦をハンモックに昼寝を楽しんだのです。
私は少女Nを確かに、愛していました。
そしてまた、少女Nも私を愛していた。
彼女は何でも私と共有したがり、鏡の様に同調していました。