少女Sの忘却
あぁ、でも
私は恐ろしかったのです。
少年Jまで、少女Nに取られる事が。
少年J――彼とは、彼女の居ない外の世界で出会いました。
少女Nとは花薗以外で会う事はありませんでした。
少年Jは私より3つ年上で、私の知らない世界を知っており、私が彼に惹かれるのは必然でした。
私は少女Nを愛してはいましたが、彼女と夢を見るより、少年Jと旅をするほうが断然魅力的だと。
そう思うようになっていました。
だから、少女Nが恐ろしかったのです。
私は彼女に気付かれないように、細心の注意を払って少女Nとお揃いの蘭の紗衣を纏いました。
私の淡い想いを気取られないように。