少女Sの忘却
私は震えながら少年Jと過ごしました。
誰かが少女Nが居なくなったことに気付くのではないか。
私に疑いの目を向け、糾弾してくるのではないかと。
けれども、町の皆は誰も少女Nが消えたことに気付いていないようでした。
はじめからいなかったかのように、少女Nの存在は忘れさられていたのです。
私は次第に少女Nの事を忘れていきました。
否、忘れてたフリをしました。
どうしたって、少女Nが私に忘却を許さないのですから。
それでも私は何度でも言い聞かせるのです。
『私は何も知りません。
私は何もやってません。
私は何も、
何も関係がないのです。』
――と。
少女Sの忘却