犬の城
10
「申し訳ございません!まさか…即位当日にここにいらっしゃるとは思いませんでしたので…」
男は何かまともな言い訳を取り繕おうと必死だった。
「よい、ひとまず中に入れてもらおうか。」
「はい、すぐに!」
そう言うと男は王を中に招き入れ、外をぐるりと見回してから扉を引いて閉じた。
「気をつけて降りてくださいね。なぜ、今日のような良きお日頃にこちらへ?」
男は訝しげに首をひねっているようだ。
―それは、私にもわからない―
王はそう思ったが、とても言える状況ではなかった。
男は黒装束に身を包み、まさに暗闇の守り人といった出で立ちだった。薄明かりではわからないが、先頭を歩くその男は、卑しい笑みを浮かべているのが容易に想像出来た。
「先代王の生前からの言伝で、私が即位する際には、まずは目を通さなければならないと言われたのでな。」
王はあたかも全てを知る口振りで話した。もしもそこに矛盾があったとしても、王に物言いするほどこの男には度胸はないだろう。
男は何かまともな言い訳を取り繕おうと必死だった。
「よい、ひとまず中に入れてもらおうか。」
「はい、すぐに!」
そう言うと男は王を中に招き入れ、外をぐるりと見回してから扉を引いて閉じた。
「気をつけて降りてくださいね。なぜ、今日のような良きお日頃にこちらへ?」
男は訝しげに首をひねっているようだ。
―それは、私にもわからない―
王はそう思ったが、とても言える状況ではなかった。
男は黒装束に身を包み、まさに暗闇の守り人といった出で立ちだった。薄明かりではわからないが、先頭を歩くその男は、卑しい笑みを浮かべているのが容易に想像出来た。
「先代王の生前からの言伝で、私が即位する際には、まずは目を通さなければならないと言われたのでな。」
王はあたかも全てを知る口振りで話した。もしもそこに矛盾があったとしても、王に物言いするほどこの男には度胸はないだろう。