この声が届く時
第一章 君の優しさ
私が去年入学した時は、桜は散ってしまっていたのを覚えている。



程良い緊張感と
浮かれる心を持って中学へ入学した。




明るいみんなを余所に私は暗かった。



私はハッキリ言って、此処でやっていく自信が全く無かった。


中学生は怖い事ばかりなのだと、思い込んでいたから。



私は保健室へ行くのがクセになってしまって、其れは先生も周りの人も呆れる程だっただろう。





「可愛いでしょ?」


保健の先生が私の髪を結んで、鏡を見せて言った。

私は何も言わず黙っていたが、私の他に保健室に居る人がもう一人。



「良く分からん…」



期待なんかして無かった。
でも其の時、少しショックだったのはきっと、気のせいだ。



やだな、2年生なんて、何か怖いかも…


嫌な考えが頭をよぎる。



「子ぎつねヘレンの、きつねを助ける奴に似てる」




アレ、私ってそんな顔してるのかな、と少し鏡を覗き込んだ。


先生が結んだ髪を解いたら、そんな気もしてしまった。



でもいつもの私ならそんな事思う筈が無い

其れは、貴方が言ってくれたから?



そんなの無い無い
私が誰かに対して胸の鼓動を感じるなんて有り得ない。


私は
おかしくなってしまいそうだった…
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