たとえどんなに辛いサヨナラが待っていたとしても
歌番組の収録が終わった後、
廊下を歩いていると反対側から、
番組の共演者で同じ事務所の女の先輩二人が歩いてくるのが見えた。

片方はデビューしたての頃に仕事で失敗して迷惑をかけてしまった人だ。
それ以来あまり良く思われていないようで、
少し苦手な先輩でもある。



目が合った瞬間、
なぜか気まずい空気が流れる。

遠くて聞こえなかったけど、
もしかしたら悪口でも言われていたのかもしれない。



「あっ...。」
「大丈夫。どうせ中国語分かってないって。」



...。
もう2年も台湾で暮らしてるからだいたい分かるのに。


聞こえなかった振りをして、
軽くあいさつだけして通り過ぎる。


そんなに私の中国語はひどいのかな?
実は伝わってなかった?





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